Thursday, August 10, 2006

一章

1980年12月8日
『約翰 連儂 射殺』
あれから25年。今日も彼の歌は鳴り響く。今はもう紐育に彼は居ない。だけど、そこにはきっと何かがある。

 紐瓦克国際空港へ着陸。入国審査は無駄に時間がかかる。テロ以降かなり厳しくなったようだ。審査が終わり、僕はひとまず本屋へ向かう。『キャッチャー イン ザ ライ』を買う為。この小説、日本語訳では読んだ事はあるものの原作ではまだ読んだ事が無かった。その後レコード屋へ向かう。『Let it Be....Naked』を買う為。日本版はCCCDとかいうふざけた奴で買う気がしない。どうせ輸入版を買うのなら、実際こっちに来てから買う事にした。CD版、LP版の両方を揃えてみた。しかし実際、英版や米版はCCCDで無いのに日本版だけCCCDにして一体どう意味があるのだろうか。海外版もCCCDにすれば若干のコピー防止の効果もあるのかもしれないが。
 紐瓦克湾東海岸へ出て、ふと曼哈頓の海岸沿いを見上げた。やはりそこはもうかつての光景ではなかった。あの2つの巨塔は消えていた。しかしその向こうには今日もエンパイアステートビルが聳え立つ。
 セントラルパークを歩いた。ここにストロベリーフィールズがある。ここは約翰連儂が生前よく訪れた所で、死後このモニュメントが作られた。
 僕は一人、セントラルパークを歩いていた。亜細亜系の女性が僕とすれ違う。その女性に以前会った事がある。その女性は、僕の初恋の、そしてまだ一度しかしたことの無い恋をした、その女性だ。最後に見たのは二十歳の成人式の時だった。

序文

基督祭、雪の降り積もる紐育、僕はその街角で目的も無く道を逝く。すれ違う人々は誰もが僕を気に留めない。先が見えない。自分の将来が見えない。来年のこの時期に自分はどこで何をしているのか。ふと気づいた時、そこは曼哈頓西72丁目、ダコタハウス、誰が置いたのだろうか、そこには今日も花束が置いてある。そう、今から23年前、ここで約翰連儂は殺された。そして25年後、僕はここで決して会えない約翰連儂に出会えることを期待してしまう。基督祭という特別な日なのだから。
*stern.star